バイタルサインとは
バイタルサインは、生命活動の指標のことを言います。
『呼吸』『体温』『血圧』『脈拍』の4つの項目を基本としますが、救急医療の現場や集中治療室などにおいては『意識レベル』『尿量』を含めた、6つの項目をバイタルサインと言う事もあります。
医療現場においてはバイタルと略されることもあります。
訪問看護ステーションにおいては、利用者のバイタルサインの正常値をしっかり把握しておくことが大変重要になります。
バイタルサインの基準値
まずは、バイタルサインの基準となる各項目の値についてです。
・呼吸:呼吸回数 12〜18回 / 分
・体温:36〜37℃
・血圧:130mmHg未満(収縮期) / 85mmHg未満(拡張期)
・脈拍:65〜85回 / 分
・意識レベル:意識清明(JCS=0、GCS=15)
・尿量:1回排泄量:約200~400mL 1日総量:約1,000~2,000mL
バイタルサインの基準値は上記のとおりとなりますが、平常時の各数値には個人差がありますので、日ごろから利用者のバイタルサイン測定を繰り返し、その方の基準となる数値をしっかり把握しておきましょう。
『呼吸』のチェックポイント
利用者の容態が急変した際、最初に確認するのが呼吸です。
「呼吸回数」と「呼吸の仕方」の2つを診て状況を確認しましょう。
呼吸回数では、「息を吸って吐く」を1回とカウントし、胸部と腹部が上下するのを見ながら1分間測ります。
呼吸回数の測定をしながら、「ゼェゼェ」「ヒューヒュー」など異音を発していないか、苦しそうでないか、胸部の動きが左右で違わないかなど、普段の呼吸と違いがないか観察します。
呼吸の仕方が通常時と極度に違う場合、肺や脳などに異常がある可能性が考えられますので注意しましょう。
測定のポイント
呼吸回数と呼吸の仕方以外に『SpO2』(血中に酸素がどれくらい含まれているか)という値も重要な指標となります。
パルスオキシメーターという機械を使用して測定することができますが、この数値が95%以下を示した場合、呼吸不全が疑われますので注意が必要です。
こちらの指標も呼吸の測定時に活用しましょう。
『体温』のチェックポイント
体温は個人差が大きく、朝は低く、日暮れにつれ高くなるという性質があります。
利用者の平熱を把握し、そこからどのくらい体温が変化しているかを注意しましょう。
測定のポイント
最近は、肌に触れることなく素早く検温できる『非接触体温計』が主流となっています。
脇に挟んで使用するタイプの体温計は、45度の角度から、体温計の先端が脇の中央部に密着するように向かって差し込み、反対の手で検温する腕をしっかり押さえて貰います。
『血圧』のチェックポイント
心臓から血液が送られるときの、血管壁にかかる圧力のことを血圧といいます。
血圧の数値によって心機能の異変や、全身の血液量の異常などを察知できます。
高齢者に多い高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす要因となるため、よく注意しましょう。
また、病室や診察室で血圧を測定する場合は、緊張などの要因で普段より高めの数値が出てしまうことも多くありますので、診察室での測定値と家庭での測定値にも差があります。
高血圧の基準値は以下の通りです。
(正常値は130 / 85 mmHG 未満)
診察室血圧:140 / 90 mmHG 以上
家庭血圧:135 / 85 mmHG 以上
血圧に影響を与える要素には「心臓のポンプ機能」「心拍出量」「血管の硬貨」など様々なものがあり、また、高齢者は動脈硬化による高血圧が多く、血圧も変動しにくいという特徴があります。
血圧が急激に低下していないかなど、変化の幅に注意しましょう。
測定のポイント
血圧計には、手動のポンプで加圧していく聴診器タイプと、全自動のデジタルタイプとがあります。
腕を心臓と同じ高さに置き、肘を曲げないようにして計測し、その際は「時間帯によっても血圧が変わる」という点に留意しましょう。
『脈拍』のチェックポイント
血圧と同じく、血液の循環を把握するための指標です。
1分間の脈拍数を測りつつ、一定のリズムで脈拍があるかを確認することも重要です。
1分間に100回を超える場合は『頻脈』、逆に50回未満の場合を『徐脈』と言い、頻脈や徐脈、脈拍のリズムに乱れがある場合は、心機能の異常や脱水症状などを起こしている可能性があります。
測定のポイント
人差し指、中指、薬指の腹を手首の橈骨(とうこつ:前腕の親指側にある細長い骨)動脈に軽く当てて1分間計測します。
全自動のデジタルタイプの血圧計では、脈拍も測れるものが多いので、それを利用しても良いです。
『意識レベル』のチェックポイント
意識の状態を評価する「覚醒」「認知」という2つの基準があります。
覚醒して認知(自身と外界の正確な認識)もできている状態を「意識清明」といい、覚醒と認知の両方、またはどちらかが阻害されている状態を「意識障害」といいます。
日本では『JCS(Japan Coma Scale / ジャパン・コーマ・スケール)』または『GCS(Glasgow Coma Scale / グラスゴー・コーマ・スケール)』という基準に基づいて意識レベルを評価することが多くあります。
『JCS』は3-3-9度方式とも言い、意識レベルを9段階で表しており、数字が大きいほど重症となります。
I. 刺激しないでも覚醒している状態
0. 意識清明
1. 見当識は保たれているが意識清明ではない
2. 見当識障害がある
3. 自分の名前・生年月日が言えない
II. 刺激すると覚醒する状態
10. 普通の呼びかけで容易に開眼する
20. 大きな声または身体を揺さぶることにより開眼する
30. 痛み刺激を加えつつ、呼びかけを続けると辛うじて開眼する
III. 刺激をしても覚醒しない状態
100. 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる
300. 痛み刺激に全く反応しない
正常な状態は「JCS=0」と表します。
『GCS』はE、V、Mの3項目の評価を合計した点数でスコア化したものです。
15点を正常、8点以下を重症とし、点数が小さいほど重症になります。
E(開眼 / eye opening)
0. 意識清明
4. 自発的に開眼
3. 呼びかけにより開眼
2. 痛み刺激により開眼
1. 痛み刺激により開眼なし
V(言語反応 / verbal response)
5. 見当識あり
4. 混乱した会話(見当識障害あり)
3. 不適当な発語(単語)
2. 理解不明の音声(アーアーウーウー)
1. 発語みられず
M(運動反応 / motor response)
5. 見当識あり
4. 混乱した会話(見当識障害あり)
3. 不適当な発語(単語)
2. 理解不明の音声(アーアーウーウー)
1. 発語みられず
正常な状態は「GCS=15」と表します。
『尿量』のチェックポイント
代謝によって濾過された、血液中の不要物や老廃物が尿として排出されます。
腎臓の機能が悪いと、正常に排出されない為、尿量は腎臓機能の評価の指標として有効です。
1日に排泄される尿を正確に管理する必要があるため、膀胱留置カテーテルなどが使用できる病院や介護施設でなければ、尿量の評価は難しいです。
まとめ
バイタルサインの数値が、どれか一つでも極端に悪化してしまうと生命に危険が及びますが、日頃から利用者のバイタルサインを測定し、正常な数値を把握しておかなければ、悪化したかどうかを判断することができません。
こまめに計測し、異常にすぐ気付ける体制をとりましょう。