訪問看護の働き方改革
看護業界は慢性的に人手不足が深刻化しています。
また2019年の労働安全衛生法改正で、経営者はスタッフの労働時間を把握する義務があります。
今回は労働時間の定義とその適正化について考えていきましょう。
訪問看護の労働時間
厚生労働省が定める「労働時間」の定義は…
『使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。』
『使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。』
『使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。』
上記のように記されています。
訪問看護の「移動」については、スタッフがステーション⇔利用者宅の移動する場合、使用者が業務に従事するために必要な移動を命じて、その時間の自由利用が保障されていないと認められる場合「労働時間」に当たります。
一方、スタッフの自宅⇔ステーションの通勤は労働時間には含まれません。
実態と過剰労働
緊急の訪問、報告書の作成、連絡調整、オンコール対応など、訪問看護師はその業務の特性と人員不足の影響もあり、時間外労働の超過勤務時間が高い職種になってしまっています。
過剰労働には多くの問題を引き起こす可能性があります。
『健康問題』
過剰労働は、身体的にも精神的にも大きな負荷があり、睡眠時間、家庭での時間、余暇時間の減少から疲労を蓄積しやすい状況を作ってしまい、スタッフ自身の様々な疾患リスクを高めてしまいます。
『医療ミス』
利用者のケア、新人の教育など様々な業務を少人数でこなす状況では、スタッフ一人ひとりの身体的にも精神的にも負荷が増え、インシデント・アクシデント等医療ミスを引き起こすリスクが高くなります。
労働時間の適正化
過剰労働を防ぐためには労働時間の適正化を図る必要があります。
以下のポイントを押さえてスタッフの労働時間をしっかり管理しましょう。
『業務の効率化』
業務の効率化は労働時間管理適正化の大事なポイントで、
「ICTの導入」は労働時間効率化に有効な取り組みの一つです。
紙媒体による記録や書類を、電子カルテなど電子媒体でおこなうことで、各種の時間を大幅に短縮することができます。
ひいては事務作業の効率も上がり、スタッフの時間外勤務を短縮、利用者やご家族と関わる時間の確保などサービスの質向上を図ることもできます。
『直行直帰』
多くの訪問看護スタッフがステーションを起点に業務に従事しています。
ステーションから利用者宅へ、利用者宅でのケア終了後は記録・報告などを行いステーションに戻るという流れには多くの移動時間がかかってしまいます。
スタッフの自宅から利用者宅という直行直帰のスタイルをとることで移動時間が削減され、その分を業務時間に充てることができるようになります。
『業務指導』
スタッフの経験や知識は、業務時間を大きく左右します。
超過勤務の多いスタッフに対して、その理由や業務内容を把握し、改善策を考える必要が管理者にはあります。
『勉強会や研修会は勤務時間内に』
時間外での残業手当が支給されていない研修などは深刻な問題です。
管理者や上司が時間外での勉強会・研修会への参加を余儀なくしてしまっては、スタッフの精神的負担になりますので、出来る限り勤務時間内に行い、やむを得ず時間外に行う場合は時間外勤務として申告させ、適切な残業手当を支給する必要があります。
まとめ
労働環境改善には、人手不足を補う事も大切ですが、離職者を増やさない、効率化を図るなどの働き方改革も重要です。