ALSとは
ALS=筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせい そくさくこうかしょう)は脊髄の前角および脳幹の運動核の中にある運動ニューロンが障害されることで起こる進行性の疾患です。
手足や舌、喉、呼吸筋など、全身の筋肉が徐々に痩せていき、筋力が衰えていきます。
運動ニューロンのうち、上位運動ニューロンは大脳皮質運動野から出た指令を脳幹や脊髄に伝え、下位運動ニューロンは脳幹や脊髄に伝わった指令を末端の筋肉に伝達しますが、ALSの場合は上位・下位ともに運動ニューロンが変性・消失し、指令が伝わらず筋力の低下、筋萎縮が進行します。
治療や管理
ALSに対する根本的な治療法はなく、神経細胞の障害を抑制して進行を遅らせる薬をつかった対処療法が主な対応になります。
機能維持、障害を補う動作訓練といったリハビリと、リハビリを実施できる栄養状態を評価する「リハビリテーション栄養」の考え方に基づいたケア介入が求められます。
様々な障害に対して
【嚥下障害】
残存機能を生かす為のリハビリ、摂食方法、食形態の工夫などを行い、ALS進行具合を観察し状況によっては経管栄養法(消化管瘻や経鼻栄養など)を検討します。
【呼吸障害】
呼吸筋の訓練、排痰法の指導などを行います。
呼吸障害が進行した場合は、マスクを用いる非侵襲的陽圧換気(NPPV)、気管切開下陽圧換気(TPPV)といった人工呼吸療法での呼吸管理を検討することになります。
【コミュニケーション障害】
発声や構音などの障害によって、コミュニケーションにも難が生じます。
意思決定に関して困難が生じることが予想され、早期の段階から対応について検討し具体化を進める必要があります。
筆談、指文字、文字盤の利用など、自分で動かせる体の部位を利用した意思伝達装置を準備します。
リハビリについて
・関節拘縮や筋萎縮などによる痛みの予防・改善のため、早期からストレッチ、関節可動域維持の為のリハビリを行います。
・軽~中等度の筋力低下の場合、筋疲労を起こさない程度の負荷をもって筋力増強訓練も有効。
・体位変換、車いすにおける座位保持などを病状の進行に合わせてケア内容と方法について変更・検討します。
・患者本人の状態や生活に対する希望を踏まえ、福祉用具や補助具を導入を支援します。
上記はリハビリに対するポイントの一部です。
訪問看護について
訪問時に観察すべき点は、その時点で観察するポイントと週単位、月単位で観察するポイントとがあります。
・日常生活に対する支障
・転倒しやすくなっていないかどうか
・目立つ体重の減少がないか
・食事や水分を摂取できているか
・排便のコントロール
・むせたり飲み込みにくいなど嚥下障害の疑いがないか
・コミュニケーションに阻害がないか
・精神状態の変化、不眠など
・ご家族の精神的、身体的な負担について
など様々なポイントをチェックします。