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【症状を知ろう】せん妄とは?

せん妄とは

「せん妄」とはいわば「混乱」という状態です。

末期がんなどで衰弱が強い高齢者に多く起こり、日中はウトウトしていたかと思うと夜間はずっと起きていてずっと何か言っている。

家族の顔がわからなかったり、時間や今いる場所が分からないというのがせん妄です。

ご家族にとってはショックな出来事で「この人は気が違ってしまった」と思ってしまうこともあるかと思いますが、この症状は病気やお薬が原因で体の状態変化によっておこる意識障害です。

せん妄の原因

せん妄が起こる原因は非常に多くありますが、大まかには以下のように分けられます。

・脳腫瘍や脳血管障害(脳梗塞や脳出血)
・血液の異常:高カルシウム血症、肝不全、腎不全等
・感染症:肺炎、尿路感染など
・薬剤性:医療用麻薬、抗精神病薬など
・全身の不快感:尿閉、便秘、痛み等
・環境要因:入院などの急な環境の変化など

【診断と治療】

人が変わるという意味で認知症と同様ですが、認知症は症状が徐々に進行し戻ることは無いのに比べ、せん妄は症状が1日のなかでも変化するという特徴があり、その原因を改善できればせん妄は治ります。

せん妄治療には、その原因の確認から始まります。

上述の高カルシウム血症が原因の場合、血液中のカルシウム値を下げる治療薬によってせん妄も改善することが多くあります。

医療用麻薬が原因の場合、その薬を変更することで改善することがあります。

ですが、多くの場合において、せん妄の原因がわかっても、患者の衰弱や病状の進行が背景にあり、原因を改善するのが困難なことが多いというのも事実です。

原因が改善できない場合のせん妄治療において最も大切なことは、患者が安心できる環境を整えるということです。

ストレスが原因でせん妄を悪化させることが多い為、白衣を着た医師や看護師がいて、採血や点滴、検査など不安になることが多い病院は、患者にとって安心できる場所ではありません。

住み慣れたご自宅や介護施設などが、患者にとって最も安心できる場所であり、ストレスも少ないので、病院に入院されていたせん妄の患者が自宅にもどったとたんにせん妄が治ったということは少なくありません。

ですが、せん妄が悪化するとご家族には辛く苦しそうに見え、つらそうに動き回る「不穏」という状態になってしまうこともあり、そういった場合は鎮静剤を使って眠ってもらうことだけが唯一の治療となることもあります。

せん妄の患者に対してご家族は不安になり「大丈夫?」「しっかりして」といった声掛けをしてしまうことが多くなりがちですが、かえって患者のストレスを増やしてしまうことになります。

せん妄の患者は意識が低下していることが多く、苦痛を感じることは少ないと言われており、ご家族には落ち着いて患者が安心できるような声掛けをしてもらうことが求められます。