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人材教育

認知症患者による暴言・暴力について(後編)

暴言・暴力が起きた時は

認知症患者が暴れてしまった場合、力や言葉で抑えようとすることは原則禁止です。

ご自身を守る為に場合によっては必要となる行動ではありますが、それは根本的な解決とはなりません。

 

【認知症の症状だと理解する】

本人は暴れたくて暴れているわけではありません。

前回お話したように、暴言・暴力に至るには理由があります。

病気を理解しようとする気持ちを持つだけで冷静に対応することができるようになるでしょう。

まずは状況を確認し、できれば本人からお話を聞き原因を探ることで不安や怒りといった感情を落ち着かせることが大事です。

 

【物理的な距離を取る】

暴言や暴れるといった症状が現れた際は、まず物理的な距離を取って、危険行動が無いか見守ることで巻き込まれないようにしましょう。

そして、患者に対して冷静に対応をとるのが難しいと思った時は無理せず他の人と交代しましょう。

言い返したり、力で対抗することは、余計に興奮させ状況を悪化させる恐れがあります。

本人は実際に周りの人を傷つけたいのではありません。

ご自身と患者の安全を守る為にも適切な距離を取りましょう。

 

【感情的な距離を取る】

物理的な距離をとったら、感情的にも距離をとるようにしましょう。

病気の症状とはいえ、たびたびそういった症状が現れることはケアをする側にとっても大きな負担です。

ケアを行う方も物理的な距離をとって落ち着き、心をリフレッシュさせることが大切です。

 

【人に相談する】

暴力や暴言に悩んでいることを誰かに相談することも大事です。

医師、ケアマネージャーといった専門職の方に相談すれば、適切なアドバイスや対処法を知ることもできます。

誰かと悩みを共有することは、ストレスや悲しさを癒すためにとても有効です。

人に話すことに抵抗がある方は、まずはノートや日記などに記録することも有効です。

 

暴言・暴力の予防と改善

【関わり方を見直す】

患者自身も自分も傷つかない為に、暴言や暴力といった症状がある患者との関わり方を見直しましょう。

 

・否定しない

患者の言動を否定しないよう意識しましょう。

認知症患者は常に不安や恐怖を感じやすく、それでもご自身なりに理解し答えを見つけようとしています。

少し違っている結論を出したとしても否定しないようにしましょう。

 

・不安や混乱にはまり込まない

本人が今どのような状況か、これからどうすれば良いかをしっかり説明することが大事です。

認知症患者は、状況の理解や把握が追いつかないことが多くあります。

また、時間がたつと一度説明したことを忘れてしまいパニックになってしまうこともあります。

そういった場合はまた、丁寧に説明することを心がけましょう。

 

・自尊心を大切に

認知症患者自身の自尊心を大切にしましょう。

本人がやろうとしていることを制止する、過剰に心配するといった言動は自尊心を傷つけ、暴言や暴力につながってしまうことがあります。

また、嫌がっていることを無理に行わせるというのも大きなストレスになり得ます。

患者自身がどうしたいのかを尊重し、代行するのではなくサポートをするという気持ちで関わりましょう。

 

・患者と自分、両者の気持ちを大切に

認知症患者の気持ちに寄り添って、意思を尊重しましょう。

もちろんケアを行う自分の気持ちを大切にすることも必要になります。

疲れ、怒り、不安といった負の感情は大きなストレスですし、認知症患者がそれらを察知してそのまま返してくることも少なくありません。

 

・他の事に関心を向ける

患者が興奮状態の際は、他のことに意識を向けることで暴力や暴言をおさめることができる場合もあります。

好きな曲を聞かせる、家族の写真を見せるといったことで自然に興奮状態がおさまることもありますので、患者が好きなことや、興味など日頃から気にかけておきましょう。